IT企業へ就職したら半ば必須となる情報処理技術者試験。意義を見出せないまま受験を続けている人も多いですが、多くの人が気づいていない視点から、その効用を解き明かします。
IT企業へ就職したら、情報処理技術者試験の受験を強く勧められた。ただでさえ覚えることが多い仕事なのに、試験勉強までするのはたいへん。仕事に直結する内容とは思えないし、このまま試験合格をめざすべきか悩んでいる。
このような疑問に答える記事です。
情報処理技術者試験とはどのようなものか
情報処理技術者試験は、「独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)」が試験事務を行う国家試験です。
その目的は、「情報処理の促進に関する法律」に基づき、情報処理技術者としての「知識・技能」が一定以上の水準であることを経済産業省が認定するものとなっています。
昭和44年に発足後、試験区分については幾度かの改定を経て、現在は、以下の13区分で実施されています。
情報処理技術者試験の種類
レベル1 エントリーレベルです。IT企業における実務未経験者や新入社員などが該当します。 | ITパスポート試験 |
レベル2 ミドルレベルであり、一定範囲の作業であれば独力で担当することができるレベルです。 | 情報セキュリティマネジメント試験、基本情報技術者試験 |
レベル3 ミドルレベルであり、要求された作業を全て独力で遂行することができ、高度IT人材としてのスキルを有していると評価される段階です。 | 応用情報技術者試験 |
レベル4 よりハイレベルな、高度IT人材に該当するレベルで、自らのスキルを活用することによって、独力で業務上の課題の発見と解決をリードすることができると評価される段階です。 | ITストラテジスト試験、システムアーキテクト試験、プロジェクトマネージャ試験、ネットワークスペシャリスト試験、データベーススペシャリスト試験、エンベデッドシステムスペシャリスト試験、ITサービスマネージャ試験、システム監査技術者試験、情報処理安全確保支援士試験 |
ITSSとは、高度IT人材育成を目的として作成された、教育・訓練を行う際の指標です。
基礎レベルのレベル1から最も高いレベルのレベル7までありますが、対応する試験が存在するのは、レベル1から4までとなっています。
合格によってかけがえのないものが得られる
試験に合格することにより得られるもの。それには、直接的なものだけでなく、多くの人が気づいていない効用があります。
直接的なもの
当然ですが、合格すれば「合格証書」を手にすることができます。
また、上位レベルの試験であれば、名刺に記載されることもあります。
こうして、目に見える形で合格を実感できることが自信につながり、また、名刺に記載されることにより、「人目置かれる」ことにもなります。
自身の経験でも、旧一種(現応用情報技術者)の試験に合格した時は、旧二種試験合格後3回目の受験でしたので、レベルアップできたことが大きな自信になりました。
多くの人が気づいていない効用
気づいている人は少ないですが、合格により「仕事力」が確実にアップします。
なぜなら、合格に向けた準備活動と仕事の完遂に大きな共通点があるからです。
たとえば、開発プロジェクトの場合、多くは手持ちの知識だけでは足りず、必要な知識を得ようと努力しますよね。
そして、得た知識を活用して完成品として仕上げ、納期までに間に合わせる。
試験においては、足りない知識を補い、試験日までに合格レベルまで引き上げるという行動となります。
つまり、開発プロジェクトで行うプロセスは、試験合格に向けた準備と共通した部分があり、試験合格により、実際の仕事でも完遂できるという自信が確実にめばえます。
試験で問われる知識と実際の仕事で必要な知識が異なるという表面的な理由だけで受験を放棄すべきではありません。
受験する気を失わせる悪魔のささやき
受験を繰り返していると、必ず通る道があります。
IT企業では、新入社員教育を経て実務についた後、基本情報技術者試験をまず受けることが多いです。
この試験は特別な工夫をしなくても、過去問の学習等により、入社2~3年の間にいわば自然体で合格が可能です。
しかしながら、基本情報→応用情報技術者試験合格を目指す段階で、挫折する方を数多くみてきています。
特に、実務遂行能力に自信を持っているかたが陥りやすいようです。
自信を持っているかたは、試験を甘く考えている傾向があります。
前述したように、基本情報試験までは自然体で合格できることが多く、自信を保持したまま応用情報試験合格を目指すことになります。
実際に受験を経験したかたはわかると思いますが、基本情報試験とは大きなレベルの差があり、合格に照準を合わせた工夫をしないとなかなか合格できません。
仕事ができる(と特に自分で思っている)かたは、連続して不合格を重ねることが耐えられません。
「実務とは関係ないもの」という悪魔のささやきにより試験自体の価値を否定し、受験を放棄する傾向があります。
まことにもったいない話ですが、実際にIT企業で仕事をした35年間で、このような事例を数多く見てきています。
モチベーションを高めるための考え方
悪魔のささやきに打ち勝つためには、試験準備で得られるものと実務との共通性を理解することが必要です。
ただ、それを実感できるのは、応用情報試験またはそれ以上のレベルの試験を突破した時です。
企業では、応用情報試験に合格すると名刺に記載されることも多く、社内外で人目置かれることを実感できます。
まずは社内で応用情報試験以上に合格した方がいれば、その方がどのような評価を得ているかを観察しましょう。
多少なりとも、試験の価値は見出せると思います。
そうしたら、応用情報試験に向けて準備をし、合格するまでがんばりましょう。
応用情報試験に合格したら、自身でその価値を実感できるので、もう迷いはなくなるでしょう。
前述したとおり、自身の経験でも、旧一種(現応用情報技術者)合格には、旧二種合格から3年を要し、挫折しかけました。
合格後は迷いがなくなり、その後6年ほど要しましたが、システム監査試験合格までたどり着くことができました。
傾向として、基本情報試験合格後、上位の試験を合格できないと、そこで受験をやめてしまうかたが圧倒的に多いです。
逆に、応用情報試験、あるいはさらに上位の試験に合格した場合は、他の区分の試験も受け続けるという傾向があります。
情報処理技術者試験には多くの区分が用意されているため、資格マニアにおちいる危険もあります。
ただ、キャリアパスを意識しながら受験する区分を選択していけば、実務との共通性も増し、得るものは大きいと考えます。
皆さんも、実務における自信を得るためのツールのひとつとして、情報処理技術者試験を活用してみてはいかがでしょうか。